『お兄ちゃんはおしまい!』について
拙者、女の子が女の子であるために生理の描写があるアニメやマンガが大好き侍としては見過ごすことのできないアニメである。
みはりは良くできた妹だ
できすぎと言っても良い昔から運動が得意で
中学では陸上の大会で記録も残しているもちろん勉強も――
優秀な妹の兄という立場
周囲の視線
重圧感だんだんオレは――
――そのあげく女の子にされて妹のおもちゃに…
…でも実のところ最近は妙に気が軽い
自分の身の丈に合った位置に収まった感じがする
もう兄はやめにして
いっそこのまま――
ねことうふ『お兄ちゃんはおしまい!』1巻より
本作はいわゆるTSというジャンルなのだが、単に性別が変わるだけでなく、「よくできた妹」の「兄」から「妹」への役割の転換も存在する。
兄(まひろ)は妹(みはり)に対するコンプレックスを一端としてエロゲー大好き引きこもりダメニートになっているのだが、女の子になることで今まで見えていた運動や勉強といったステータス的な妹の優秀さだけでなく、髪の手入れ、下着の買い方といった「女の子としての成長」にも気づける格好となる。
その最たる例として生理の描写が、原作1巻、アニメ2話で早くも登場する。生理とは男性女性の間に存在するあまりにも深淵な谷なのだが、男性に生まれながら生理を経験できるというのはTSの醍醐味だ。それが本作では優秀だ完璧だと思っていた妹も毎月経験している苦痛として身をもって知るエピソードとして機能している。つまり、妹になることでより妹を知ることにつながっているのである。
TSの本質は転換(ある性を失い別の性を得る)ではなく獲得(新しい性を得る)だと個人的には考えていて、本作ではそういう前向きなTSが描かれている点が好ましい。つまり、兄まひろは女性性と妹という役割を獲得したことで兄という固定された役割をおしまいにし、その時々で兄のように振る舞ったり妹のように振る舞ったり、とても曖昧に存在できている。それが楽しそうに描かれている(アニメはアニメ的な演出が優れているので特に楽しそうに感じられる)。
今期の期待作なのでみなさまにもぜひ見ていただきたい。