『お兄ちゃんはおしまい!』12話について

「「「「今の絶対に薬飲まずに捨てる流れやったやん!」」」

そう思った一方で、まひろはもう少し曖昧でいることを自ら選択したということになる。それは本当は間違っていることなのかもしれない。だが彼をよく知るみはりはそれを肯定的に受け入れている。引きこもりよりはずっといい。楽しそうに人と関わってくれる方がずっといい。それを選んでくれて嬉しい。

以前の記事で以下のように書いた。

TSの本質は転換(ある性を失い別の性を得る)ではなく獲得(新しい性を得る)だと個人的には考えていて、本作ではそういう前向きなTSが描かれている点が好ましい。つまり、兄まひろは女性性と妹という役割を獲得したことで兄という固定された役割をおしまいにし、その時々で兄のように振る舞ったり妹のように振る舞ったり、とても曖昧に存在できている。

社会的な立場、役割からの逸脱という点を出発点としているこのアニメにおいて、逸脱し続けることを選択しての最終回というのは、実はとてもチャレンジングだったのではないかと思う。曖昧に済ませたいなら、まひろにちんちんが復活する描写をしなければよかっただけの話だ。それをあえてして、そしてさらにまた薬を飲む選択までさせるというのは、まひろを曖昧な存在であり続けさせることに対する明確な意志を感じる。

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